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ヘラ絞り加工とは?歴史やメリット・デメリット説

ヘラ絞り加工とは?歴史やメリット・デメリット説

金属加工の中でも、伝統技術と職人技が色濃く残る「ヘラ絞り加工」。一枚の金属板を回転させながら、専用工具で少しずつ成形していく加工方法で試作や小ロット品、高品質な製品づくりに欠かせない技術です。

この記事では、ヘラ絞り加工とは何かをはじめ、歴史、メリット・デメリットまで幅広く解説します。金属加工の理解を深めたい方や、加工方法の選定で迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

 

ヘラ絞り加工とは?

金属の円板(ブランク)を回転させながら、専用のヘラ棒やローラで押し当てて成形する「塑性加工」の一種です。スピニング加工とも呼ばれており、溶接を伴わない成形ができ、継ぎ目のない美しい仕上がりになるのが大きな特徴です。

丸みを帯びた容器、円筒状部品、円すい形状、球面形状などに適しており、照明器具・厨房用品・理化学機器・工業部品・装飾品など、幅広い分野で活用されています。近年では、航空宇宙産業・半導体製造装置・原子力分野など、精度の高い部品を必要とする先端産業でも欠かせない加工技術になっています。

 

歴史

起源は古く、その原型となる技法は中世ヨーロッパで確認されています。日本へ伝わった時期や経緯は定かではありませんが、戦前頃に伝わり、金属加工産業の盛んな地域で技術が定着したといわれています。戦後の高度経済成長期には、照明器具、調理器具、機械部品、電子機器部品など幅広い産業で需要が拡大し、日本の製造業を支える加工技術として普及しました。

近年では、NCスピニングマシン(自動ヘラ絞り加工機)が用いられることもあり、大量生産や品質の均一化も可能になっています。しかし、複雑な曲面や微妙な肉厚調整、美観を重視した仕上げといった領域では、依然として熟練職人の手作業によるヘラ絞りが不可欠です。

 

加工可能な素材

ヘラ絞り加工で扱える素材は幅広く、一般的には「延性が高く、加工時に割れにくい金属」が使用されます。

代表的なものとしては以下が挙げられます。

アルミニウム
軽量で柔らかく延性が高いため最も一般的。照明器具・調理器具・装飾品など幅広い用途に使用され、量産・試作のどちらにも適しています。

ステンレス
強度と耐食性に優れ、産業機器・医療機器・食品関連部品などで使用されています。衛生性や耐久性が求められる場面で重宝され、長期間使用する部品にも適した素材です。


延性が高く加工しやすいのが特徴で、仏具、工芸品、熱交換器などの製作で活用されています。


強度が高く、産業用部品や機械部品で使用されています。用途に応じて板厚調整が必要で、耐久性を確保しながら比較的コストを抑えられる点が特徴です。

チタン
軽量かつ高強度で耐食性も高い金属。航空宇宙部品、医療機器など高付加価値製品に用いられていますが、加工難易度は高く、高度な技術が必要とされます。

 

ヘラ絞り加工のメリット・デメリット

ヘラ絞り加工のメリット・デメリット

ヘラ絞り加工のメリット・デメリットとして以下のことが挙げられます。

 

メリット

最大のメリットは、「少量生産に強い」点です。プレス加工のように複雑な金型を複数用意する必要がなく、基本的にオス型1つで加工できるため、初期投資を大幅に抑えられ、試作や一点もの、形状変更が多い製品づくりなどに適しています。切削加工のように大きく削り落とす工程がないため材料の無駄も少なく、歩留まりの高い生産が可能な点もメリットです。

また、加工時に必要な力が比較的小さく、装置もコンパクトに収まることから、稼働時の騒音や振動が少ない点もメリットといえます。職人が力を調整しながら成形するため、滑らかな曲面や薄肉形状など、他工法では難しい造形を美しい仕上がりで実現できるのも大きな魅力です。細かな寸法修正にも対応できるため、オーダーメイド製品の製作にも向いています。

 

デメリット

一方で、手作業によるヘラ絞り加工にはいくつかのデメリットも存在します。まず、職人の技量によって品質が左右されやすいという点が挙げられます。また、大量生産には不向きで、同じ形状を高速・大量に生産したい場合にはプレス加工やスピニング加工など、他の工法が選ばれる傾向にあります。

さらに、素材の肉厚が薄すぎると加工中に割れやシワが発生しやすく、逆に厚すぎると加工負荷が高まり、成形そのものが難しくなることがあります。形状によっては専用の治具が必要となる場合もあり、複雑形状の製品では加工時間が長くなることもデメリットです。職人不足や技術継承の難しさも、近年の課題として指摘されています。

若手の参入が少ないことから、貴重な技術が失われるリスクがあり、生産体制の維持にも影響を及ぼす可能性があります。

 

ヘラ絞り加工に関するご相談は「ナガセ」へ

ヘラ絞り加工に関するご相談は「ナガセ」へ

ヘラ絞り加工の依頼先をお探しであれば、豊富な経験と実績がある「株式会社ナガセ」にぜひご相談ください。

半導体・光学・航空・農機具・真空装置など、多様な分野で必要とされる高品質なヘラ絞り加工品をこれまで数多く生み出してきた老舗企業です。ベテランから若手まで専門技術者が揃い、素材のばらつきや板厚制御が必要な複雑な加工にも柔軟に対応できます。

ヘラ絞り加工を核としつつ、板金・溶接・3Dレーザー加工・バフ研磨など、関連工程を一貫対応できる体制を構築しており、大型品や少量多品種、長期安定供給が求められる案件も安心してお任せいただけます。

ヘラ絞り加工をはじめとした金属加工に関するお悩みやご相談がございましたらお気軽にお問い合わせください。
 
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ヘラ絞り加工にご興味がある方へ

ヘラ絞り加工は、金属素材を回転させながら成形する技術で、初期投資を抑えられ、自由度が高く、美しい仕上がりになるといったメリットから、古くから多くの産業で活用されてきました。

近年はスピニングマシンの普及も進んでいますが、精度や品質が求められる場面では、熟練職人による手作業が必要になります。ヘラ絞り加工に興味がある方、依頼先をお探しの方はぜひ今回の記事を参考にしていただければと思います。